ナンセンのフラム号遠征
1893年に出発したノルウェーの北極遠征隊 / ウィキペディア フリーな encyclopedia
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ナンセンのフラム号遠征(ナンセンのフラムごうえんせい、英: Nansen's Fram expedition)は、1893年から1896年に、ノルウェーの探検家フリチョフ・ナンセンが、北極海の東から西に向かう自然の潮流を利用して、地理上の北極点に到達しようとした試みである。他の極圏探検家達からは多くの否定的見解が述べられていたが、ナンセンは、その遠征船フラム号で北極海東部のノヴォシビルスク諸島に向かい、叢氷の中に船を凍結させ、そのまま漂流して北極点に到達するのを待った。漂流の緩りとした速度と不安定な性格に耐えられず、18か月後にナンセンと選ばれた隊員であるヤルマル・ヨハンセン(英語版)が船を降り、犬橇のチームと共に北極点を目指した。結局北極点には達しなかったが、それまでの最北端である北緯86度13.6分の記録を作り、その後2人は長期間氷と海を渡って、ゼムリャフランツァヨシファに無事帰還した。一方フラム号は西への漂流を続け、最終的には北大西洋に出てきた。
この遠征のアイディアは、アメリカの船USSジャネット号が1881年にシベリアの北海岸沖で沈没し、3年後にグリーンランド南西海岸沖で見つかったことから得られた。この難破船は明らかに北極海を渡って来ており、北極点そのものを通過した可能性があった。このことや、グリーンランド海岸で回収したほかのゴミから、気象学者のヘンリク・モーン(英語版)は極点を漂流する学説を考えだし、それがナンセンをして、特別に設計した船ならば、叢氷の中に閉じ込められたまま難破船ジャネット号と同じ経路を辿り、北極点の近くに達することができると考えるに至った。
ナンセンは丸い船腹など長期間氷の圧力に耐えられるようにデザインした船の建造を監督した。この船は長く氷に閉じ込められてもほとんど脅威を受けず、3年後には無傷で戻って来た。この期間に行われた科学的観測によって海洋学の新しい分野に大いに貢献し、その後はナンセンの科学的研究の重要課題になった。フラム号の漂流とナンセンの橇の旅によって、ユーラシア大陸と北極点の間には注目するような陸地がないことが証明され、北極点近くの領域は氷に覆われた深い海であることが確認された。ナンセンはこの遠征後に探検から身を引いたが、ヨハンセンと共に開発した旅や生存のための手段は、その後の30年間における北極や南極での遠征全てに影響を与えた。