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ドライクリーニング(英語: dry cleaning)とは、乾燥洗濯(かんそうせんたく)の意味で、洗剤を溶かした水の代わりに石油系溶剤や、フッ素系の合成溶剤などの有機溶剤を使って、衣服を変形(伸び縮み、風合い変化)を抑えて洗濯することをいう。 なお、ドライクリーニングを専門に行っている業者はクリーニング業法の「クリーニング業」とされ、都道府県知事への届出や確認など法的な規制を受ける。
ドライクリーニングは1820年頃、フランスでジョン・バプティスト・ジョリ(Jolly Belin)が始められたとされ、アメリカでは、1821年に Thomas L. Jennings が、「dry scouring」という名で特許を得た。 これを1855年のパリ万博に、Jolly Belin の娘婿がドライクリーニングショップを出展して、一気に広まった。
なお、ドライクリーニングの語源は、珪酸アルミナ(粘土質)に去勢牛の胆汁(界面活性剤)を混ぜたものをシミに塗り、海綿(天然のスポンジ状のもの)で乾くまで(ドライイング)擦って綺麗にしたしみ抜き用語から転化したもので、現在の洗浄方法を表すものではない。
油脂は水に溶けにくく、通常の水を使った洗濯では落とすことが難しい。そこで水の代わりにあぶらを良く溶かす有機溶剤を用いて洗濯する方法があり、これをドライクリーニングという。ドライクリーニングではオイルの染みや口紅など、普通の洗濯では落ちにくい油脂系汚れもよく落とすことができる。
またドライクリーニングではウールなどでできた衣料品でも、縮みや型くずれがしにくいという特徴がある。これらの繊維は水によって膨潤したりまたは繊維の表面が変性したりしてしまうが、有機溶剤ではこのような変化が生じないためである。
一方、ドライクリーニングでは水溶性の汚れ(汗、食べ物のはねなど)は普通の洗濯に比べ落ちにくい。このためずっとドライクリーニングのみを行っていると、水溶性汚れが蓄積されるために衣料が黄ばんでくることがある。
また、ドライクリーニングで用いる有機溶媒は非常に溶解性が強いため、合成色素なども溶かすことができる。したがって、物によっては色が落ちたりボタンが溶けたりすることがある。近年多用されている複合素材の中にもドライクリーニングが適さないものがある。このため、全ての衣料品にはドライクリーニングができるかどうかが絵表示されている。
ドライクリーニングができるかどうかについてはJIS L0001(2016年11月まではJIS L0217)「繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法」によって下記の3種類に分類され、それぞれの製品に記号で示されている(記載義務がある)。
2016年12月以降、日本の規格が後述のISO 3758に準拠したJIS L0001に変更された[1]。
国際的な「ケアラベル・取扱い絵表示」(ISO 3758)では、クリーニングについて、テトラクロロエチレン(パークロロエチレン)または石油系溶剤によるクリーニングが可能な場合はPに○、石油系溶剤によるドライクリーニングのみ可能な場合にはFに○、ドライクリーニング不可の場合には○に×を重ねた表示が用いられる[2](上記JIS L0001を参照)。
ドライクリーニングは、通常は普通の洗濯と同じように洗濯機を用いて行う(家庭で行う洗濯を水ではなく有機溶媒で行うと考えてよい)。洗濯したいものを有機溶媒に浸し、場合によっては洗剤や少量の水(汗など、水溶性の汚れを落とすため)を加えたのち、洗濯機内で回転させる。すすぎ・脱溶媒を行った後、乾燥機で乾燥させる。ただし有機溶媒は可燃性であったり、またプラスチックを溶かしたりするためどの過程でも専用の特別な機械を使用する。また使用した溶媒を下水に流すことはできないため、回収・再利用できる仕組みになっている。
洗濯・乾燥の終了後は蒸気を使って衣類の型を整えたりプレスしたりした後、折りたたんで袋に入れて完成となる。
ドライクリーニングに使用される有機溶剤はクリーニング業者によって様々であるが、大きく塩素系と石油系に分類することができる。また、洗剤は陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、あるいは非イオン界面活性剤に分類できる。
ドライクリーニングついての基準となるJIS L0860(「ドライクリーニングに対する染色堅ろう度試験方法」)では、溶剤・洗剤として以下のものを使用している。
洗剤を用いる場合は陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤を両方用い、有機溶媒の1/1000程度の水を加える。
ドライクリーニングでは、物によっては色落ちしたり、ボタンなどの合成樹脂部分が溶けてしまったりすることがある。ドライクリーニングの適否はそれぞれの製品に明記されているので、この表示に従う必要がある。
また、ドライクリーニングは有機溶媒を用いており、十分乾燥していない場合は肌の敏感な人では化学やけどをする場合がある。しかし、有機溶媒は水よりもはるかに乾きやすいため、普通に乾燥を行えば洗濯後に有機溶媒が残ることはまずない。とはいえ、まれにクリーニング後にかけられているビニールを取らないでおくなどのある一定の条件下において、わずかに残留した有機溶媒が服を傷めることがある。
ドライクリーニングでは、利用者よりも作業者のリスクが高い。溶剤として用いるパークロロエチレン(テトラクロロエチレン)は手足のしびれや肝機能障害を起こすなどの毒性があり、一定の閾値はあると考えられるものの、発がん性の恐れがあるとされる。また、外部に漏れると環境汚染の原因ともなるため、極めて厳格な排出規制がある。石油系溶剤は可燃性が高く、取り扱いを誤ると火災の原因となる。以上のことから、有機溶剤の取扱いには極めて注意が必要である。
クリーニング業については、クリーニング業法第2条で
この法律で「クリーニング業」とは、溶剤又は洗剤を使用して、衣類その他の繊維製品又は皮革製品を原型のまま洗たくすること(繊維製品を使用させるために貸与し、その使用済み後はこれを回収して洗たくし、さらにこれを貸与することを繰り返して行なうことを含む。)を営業とすることをいう。
と定義される。さらに、洗濯物のクリーニング処理を行う「クリーニング所」や営業免許である「クリーニング師」が規定されている。
かつては商店街などの店舗に機械を設置して、ここで洗濯物の受け渡しと処理を行う個人経営に近い業者が多かった。しかし、2005年現在、実際に多く見受けられるクリーニング店は単なる洗濯物の受付・引渡し窓口となる取次ぎ所であり、ここから専門の処理工場である「クリーニング所」へ洗濯物が運ばれて洗濯・プレスなどの作業が行われ、処理の終了後に再び取次ぎ所に運ばれることが多い。
しかし、マーケットの拡大とともに増加させてきた取次店が今度は競争激化の要因となり、単価の下落などダンピングをもたらす結果となった。
2010年現在、ふとん・カーテン・じゅうたんなどを客の家まで引き取りに来て、クリーニングの後に返しにくるというサービスも登場している。ベッドのマットを客の家でクリーニングをするというサービスもある。
更に2019年現在は店舗を持たず、集配を宅配業者に委託することでクリーニング品質を保ちながら格安でクリーニングを行う宅配クリーニングの人気も目立っている。直接店舗で衣類を受け渡しはなく、インターネット上にて完結するため忙しい現代人にマッチしたと言える。
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