デジタル保存
継続的な価値のデジタル情報に関する公的なプロセス。信頼でき、使用可能でアクセスを保証するため規程を設ける。 / ウィキペディア フリーな encyclopedia
図書館情報学およびアーカイブズ学において、デジタル保存(デジタルほぞん)とは、継続的な価値をもつデジタル情報が長期的にアクセスでき利用可能であることを保証する公式なプロセスのことをいう[1]。それは計画の策定、資源の配分、保存手段・技術の適用を含み[2]、媒体の損傷や技術の変化といった諸課題がどのようなものであれ、デジタル化されたコンテンツやもともとデジタル形式で作成された「ボーンデジタル」コンテンツへのアクセス機会を保証するための方針・戦略・活動を組み合わせたものである。デジタル保存の目標は、真正なコンテンツを長期にわたり精確に表示・生成(レンダリング)することである[3]。
米国図書館協会の一部門である「図書館コレクション・テクニカルサービス部会」(2020年に新たな部会 Core: Leadership, Infrastructure, Futures に統合)の保存・デジタル化セクションでは、デジタル保存について「長期的にデジタルコンテンツへのアクセス機会を保証するための方針・戦略・活動」を組み合わせたものと定義していた[4]。専門用語辞典 Harrod's Librarians' Glossary and Reference Book によれば、デジタル保存とは、技術進化によりもとのハードウェアやソフトウェアの仕様が旧式化しても対象となるデジタル資料が利用可能な状態を維持する手法のことをいう[5]。
デジタルメディアの寿命は相対的に短いためデジタル保存の必要性が生じる。広く用いられているハードディスクドライブは、スピンドルモーターの損傷などのさまざまな理由から数年で使えなくなりえ、フラッシュメモリ(SSD・携帯電話・USBフラッシュドライブ上のものや、SD・マイクロSD・コンパクトフラッシュなどのメモリカード内のもの)は、保管時の温度や寿命内に書き込まれたデータ量にもよるが、最後に利用されてから一年ほどでデータが損失し始めかねない[要出典]。現在、保存用のアーカイバルディスク(英語版)と呼ばれるものも利用できるが、耐用年数は50年ほどにすぎず、かつ、ソニーとパナソニックという日本企業2社により販売されている、プロプライエタリなフォーマットである。M-DISC はDVDベースのフォーマットで、1,000年間データを保持可能と謳われているが、書き込みには特殊な光ディスクドライブが必要で、格納されたデータを読み出す際にも一般的なものでなくなりつつある光ディスクドライブが欠かせないことに加えて、このフォーマットの開発会社(Millenniata社)はすでに破産している。LTOテープに保管されたデータは、古いテープが新しいテープドライブでは読めないため、定期的にマイグレーションを行う必要がある。RAID構成のディスクアレイを導入すれば1台のハードディスクドライブの故障に対応できるが、あるディスクアレイのドライブと別のディスクアレイのドライブとが混在しないように注意しなければならない。