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アンドレア・リタ・ドウォーキン(Andrea Rita Dworkin、1946年9月26日 - 2005年4月9日)は、アメリカ合衆国の哲学者、活動家、作家、ラディカル・フェミニスト。ニュージャージー州カムデン生まれ。ユダヤ系。
1960年代から平和運動やアナーキズムに関わるが、左翼の中にもひそむ女性への暴力に気づく。オランダに渡り、結婚生活を送るが、「夫からの暴力を受け」、1970年代初頭よりラディカル・フェミニストとして活発に活動するようになる。ポルノや売春の暴力性を訴え、キャサリン・マッキノンとともに反ポルノグラフィ運動やデモを行った。文芸批評においても、男性作家達がレイプや性暴力をエロティックに肯定していると糾弾した。彼女の思想は、「合意の上で行われた結婚もレイプと同じ」であり、「ポルノは撲滅されるべきもの」というものであった。自身の思想を実現するためには、表現規制や抗議行動も当たり前と捉えていた。
ラディカル・フェミニズムを象徴する人物であるが、その急進的な主張には反フェミニズムのみならずリベラル・フェミニズムからも批判を受けている[1][2]。その一方で共感や支持も少なくないのも確かである[3]。
極端な肥満体のため、晩年は変形性膝関節症や血栓などの病気に悩まされ、2005年にワシントンD.C.の自宅で睡眠中に心筋炎により死去した。58歳。
ドウォーキンは著書『ポルノグラフィ―女を所有する男達』(ISBN 9784791751280)で、以下のように書いている。
結婚とはレイプを正当化する制度。レイプは本来、婦女を無理矢理連れ去るという意味だが、連れ去って捕虜にすると結婚になる。結婚とは捕虜である状態の拡大延長。略奪者による使用のみならず所有を意味する。
家族という孤立した小単位に分断されることにより、人々は共通利益のために一致団結して闘うことができなくなった。
ドウォーキンにとって制度は、それが宗教的なものであれ慣習であれ法律であれ、女に対する男の優位を創りだして持続させるものとしての性交に、貢献している。性交は「プライヴェート」なものではない(『インターコース 性的行為の政治学』、第8章「法律」)。「プライヴァシー」は国家の規制を被らない自由の領域であるが、女にとってはしばしば独房、ゲットーになる。
ドウォーキンによれば、身体の接触を伴わない「強姦」がある。ポルノグラフィの撮影のさい、被写体の女が使用されたとき、それは「第1の強姦」である。「第2の強姦」は、その写真を見る人がそれを消費することである(『ポルノグラフィー女を所有する男たち』、第5章「力の行使」)。ここでドウォーキンが言及している写真は、2人の女が写ったものと女の恥部がクローズアップされたものである。
また、ドイツ版『プレイボーイ』からアメリカ版に再掲載された、レーザー照明が使用されているという別の或る写真に至っては、「魔女は火あぶりにされた。ユダヤ人は焼却された。レーザーは焼く。ユダヤ人であり女である『プレイボーイ』のモデルは、捕らわれ、縛られ、焼かれる危機にさらされている」と、ドウォーキンは言う。このモデルがユダヤ人「である」という表現が隠喩であるのか否かは判然としない。
フランスのフェミニストであるエリザベット・バダンテールは、ラディカルフェミニズムを批判する本である[4]『迷走フェミニズム これでいいのか男と女』で、ドウォーキンを批判している。ドウォーキンとキャサリン・マッキノンの言う「男性支配」というコンセプトは、女性の抑圧の根源は男性性や男性のセクシュアリティであるという論理をもたらす。このコンセプトは、現実の複雑さや歴史性、男女関係の変化について考えるのを回避することに役立っている。バダンテールは、女性というジェンダーを「犠牲者化」するきらいのある保守的なラディカル・フェミニズムを批判し、とくにドウォーキンとキャサリン・マッキノンに対しては、「極端すぎて女性を笑いものにする」と強く反対している[5]。
バダンテールはまた、ドウォーキン『ポルノグラフィ 女を所有する男たち』の第2章「大人の男と男の子」の最終段落を引用し、ドウォーキンの結論を「強姦は異性愛の枠組みの一部だ」という主張であると見なしている[6]。
イヴ・セジウィックは『男同士の絆 イギリス文学とホモソーシャルな欲望』の序章でラディカル・フェミニズムに言及し、その代表格の一人にドウォーキンを挙げ、「ラディカルフェミニズムは、ジェンダーやセクシュアリティの意味がこれまで著しく変化してきたことを、暗にであれ露骨にであれ、否定しがちだ。(中略)重大な変化をもたらす要因を徹底的に単純化してしまうかもしれない」と言及している。
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