女性の肖像 (ファン・デル・ウェイデンの絵画)
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『女性の肖像』(じょせいのしょうぞう(蘭: Portret van een vrouw、英: Portrait of a Lady))は、初期フランドル派の画家ロヒール・ファン・デル・ウェイデンが1460年ごろに描いた絵画。オーク板に油彩で描かれた小作品で、1937年にワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーに寄贈されて以来、同美術館が所蔵している。ヴェール、襟足、顔、腕が幾何学的な輪郭を形作り、上方からの光が女性の表情と髪飾りを明るく照らし出し、明部と暗部の鮮やかな対比が、作り物めいた美しさとゴシック風の優美さを強調している作品である。「あらゆる美術流派のすべての女性肖像画の中でも有名な作品」と評価されている[1]。
オランダ語: Portret van een vrouw 英語: Portrait of a Lady | |
作者 | ロヒール・ファン・デル・ウェイデン |
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製作年 | 1460年頃 |
種類 | オーク板に油彩 |
寸法 | 34 cm × 25.5 cm (13 in × 10.0 in) |
所蔵 | ナショナル・ギャラリー、ワシントンD.C. |
ファン・デル・ウェイデンはその生涯を閉じるまで肖像画を依頼されて描き続けた画家で[2]、モデルの人間性をも描き出したようなその肖像画は、後世の画家たちから高く評価されていた。この『女性の肖像』でも、モデルとなっている女性の謙虚さや穏やかな物腰といった美点が繊弱な肉体表現、伏目がちの両眼、固く握りしめられた両手を通じて描き出されている[3]。描かれている女性は痩せており、ゴシック芸術で理想とされた細長く引き伸ばされた外観で描かれ、狭い肩幅、しっかりとまとめられた髪型、長い額、手の込んだ髪飾りなどが特徴的に表現されている。この絵画はファン・デル・ウェイデンの署名がある唯一の女性肖像画だが[2]、描かれている女性の名前は伝わっておらず、作者のファン・デル・ウェイデンもこの作品に題名をつけてはいない。
ファン・デル・ウェイデンはモデルを理想化するそれまでの伝統的表現はほとんど採用していないが、それでもなおモデルを美化して描いた画家であると考えられることが多い。ファン・デル・ウェイデンの肖像画に描かれた人物はその当時の流行最先端の衣装を身につけた、ほとんど彫像のような丸みを帯びた外観で表現されることが多く、写実的表現からは逸脱していることもある。独自の美意識にしたがって人物を描いた結果、ファン・デル・ウェイデンの肖像画には、別の女性を描いた作品であっても非常によく似た作品となっていることがある[4]。